一生勉強《後編》


何の変哲もない普通のマンションに着いたボクは、普通に部屋番号を押し、普通にエレベーターに乗っていた
怖いもの知らずじゃなく、無知の怖さは全く恐ろしい。。。
「ピンポーーン」
部屋には、本当に普通のオジサン一人。。。
「どうぞどうぞ。」
と、なんの疑いもなく、上がっていったボクは、普通に座っていた。


始まったのは、普通の面接。フタを開いてみたら…【飲み屋の面接】
「お酒を作ったりさ、お客さんと話をするのがお仕事です」
「自分も一緒にお酒飲むこともあるけど、大丈夫かな!?」
(え、本当に。それだけ!?。。。それだけにしては、時給が高過ぎないか…)
(まぁ、でもそれだけでいいなら、こりゃ楽かもしれないwww)
なんて安易な考えを持ってたのは、その時まで。。。
日にちは過ぎ、バイト初日。
場所は、【新宿二丁目】
そうなのである。普通なら、もっと前に気付いていてもオカシクないし、多少歳を重ねた今のボクなら分かっている。
当然、普通の飲み屋であるわけはなく…
其処は、分かりやすくいうと【売り専BAR】男性が男性を求めて来客するお店。
店内には、本当にイケメンばかり、カッコいい男性が沢山。
(営業前に店長との面接で源氏名を付けることになり、ボクは【タケシ】となって働いていたw)
売り専BARなんて世界を知らなかった初日のボクは、右も左も分からない。。。
絶えず、現状把握に忙しく過ごしていた。
そうこうしてると、店長からお呼びが掛かった。
程なく、本当にものの15分も経たないうちに「タケシ、このお客さんと外で飲んで来なよ!」
(どーいうことだろう????)
訳も分からず、初老の(40代後半〜50代前半位?)の男性と飲みに行くことに…
着いた先は、これまたマンション(…つくづくマンションにホイホイ付いて行く男だ)
(部屋飲み?家飲み?ま、いっかw)
なんて安直、なんの疑いもなく付いていったオジサンの部屋。
出てきたのは、普通の缶ビール。。。
ビールを飲み干す間もなく
「お風呂入る?」
まぁ、その日はまだ入ってなかったし『じゃあ…』(なんて言って風呂を頂く)
そしたら、そのオジサン…「よいしょ、っと」
なんて言って、まだボクが入っている最中の風呂に入って来たもんだから
『いや、ちょっとちょっと(汗)』
慌てて、風呂を出た。
オッサンも風呂から出てきてボクに
「じゃあ、とりあえず【しゃぶって】」


『…は?』(ナニをイッテイルンダ???)
「じゃあ、先にしゃぶってあげようか?」
『…いや、何言ってるんですか?』
「困るよ!初日って言うし、店長もオススメって言うから誘ったのに…」

…(何となく、徐々に理解してきたボクがいる)
「このままだったら、店長に電話するよ!?」
いい加減に腹立ったボクも
『うるせぇよ!こっちはそんなつもりで来てねぇんだよ!!』
「…じゃ、じゃあ、帰れ!」
『言われなくても帰るっつーんだよ!!』
マンションを後にしたボクは、コンビニに立ち寄り、ゆっくりとお店に戻った
辺りは、パラパラと小雨が降り出していた。。。
「タケシ!」案の定、店長にすぐに呼びつけられた
「あんた、どーいうつもりよ!○○さんに何したの?」
(言い忘れていたが…店長は、オカマ口調だが、身の丈190センチはあろうかとの大男だ)
『いや、急にしゃぶれとか言うし、そんなの出来ないっスよ!』
「タケシ、ここはそーいう店なの!みんなそーやってお金稼いでるの!
そんな事も出来ないなら帰りなさい。もう来ないでいいわ!!」
「わかりましたよっ!!もう帰ります!!」
ムシャクシャと苛立ち、若かりしボクは、それこそ力一杯、
ドアが壊れてもいいという思いでドアを閉めて、出て行った。
…すると
「ダケシ!ゴラァーー!!」
鬼のような形相をした店長が駆け下りて来て
「テメー、今何したぁーー!!」
(さっきまでのオカマ大男は、ゴリゴリのイカツイ大男に…)
若かりしボクは、勢い。本当に勢いだけで…
『あぁ?何もしてね…』


ボクの言葉の終わりを待つ間もなく、190男の鉄拳が…
なんとか喰らい付こうとしても、相手はオカマ店長の皮を被ったゴリゴリの男
全く歯が立たず、ボッコボコ。。。



初めて新宿二丁目に出向き、忘れられない心と体のキズを負った、二十歳そこそこの夜。


いつの間にか、本降りになってきていた雨の音だけが、
ゴミ捨て場に埋もれたボクの中に、響いていた。。。


人生は常に勉強。あの経験も今思えば…


…いや、やっぱあの時は腹立った(笑)


《完》

>>「第24話 一生勉強《前編》」

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